図録本 ガラスの精華 サントリー美術館所蔵 工芸ガラス ガラス器 江戸時代 和ガラス 薩摩切子 乾隆ガラス
大分県立芸術会館
1993年
71ページ
約30x21x0.7cm
フルカラー
※絶版
サントリー美術館所蔵のガラス工芸コレクションから、中世近世以降の洋ガラス・和ガラス(江戸切子、薩摩切子、長崎系吹きガラス)・中国・清時代の乾隆ガラスを厳選した展覧会の図録本。
作品図版131点をフルカラーで紹介、制作年代、国、寸法、制作技法と見どころなどの詳細解説、論考テキストを付した大変貴重な資料本。
和ガラス、アンティーク、時代ガラス、和骨董、中国美術等愛好家必携の一冊。
【ごあいさつ】より
「くらしの中の美」を基本テーマとするサントリー美術館は、人間の生活を美しく彩ってきた絵画や陶磁器、漆器、染織、ガラスなど2700点余りを所蔵しています。このうち400点余りを占めるガラスはそれぞれ固有の美と特質を誇るヨーロッパ、中国、日本の多彩なガラスで構成されています。なかでも異彩を放つ中国の清時代の乾隆ガラスと日本の江戸時代の薩摩切子の貴重なコレクションは本県出身の彫刻家故朝倉文夫氏の旧蔵品を核とするものでもあります。今回、この旧朝倉コレクションから選んだ72点を含むサントリー美術館のガラスの名品131点を初めて大分の地で紹介いたします。
4500年の歴史を持つガラスは、現在も紀元前以来の様々な技法を継承、融合、発展させながら世界各地で活発な造形活動を展開しています。本展を通して現代の活況の礎を築いた近代のガラスの豊潤な遺産をお楽しみいただければ幸甚です。
1993年11月
【サントリー美術館のガラスコレクション】より一部紹介
土屋良雄
1 コレクションの経緯
サントリー美術館は、昭和36年に開館しましたが、以来「生活の中の美」を基本テーマとして、企画展の開催と美術工芸品の収集に当たってきました。美術館設立の趣旨は、私達の祖先が、優れた美的感性のもとに、日常の暮らしの中でどのようにして美しいものを創り出し、育んできたかを、今日の視点から再認識してゆこうとするものでした。このような視点に立つとき、漆器や陶器は勿論のこと。「ガラス」も常の生活と極めて密接な関係にあり、当館にとって取り組むべき分野の一つでもあったのです。
開館の翌年には、早くもガラスの収集が始まり、その第一号は薩摩切子紅色筆筒(出品番号100)でした。以来、今日まで、その収集活助は継続され、長崎系吹きガラスの緑色泡玉文蓋物(39)、紫色藤蒔絵徳利(52)などが加わって、江戸期の和ガラスがとりわけ充実したものとなりました。一方、ガラス器をテーマとする企画展も活発に開催され。昭和44年には「江戸のガラス」展が、51年には「乾隆ガラスと薩摩切子一朝倉コレクション」展が開かれています。これらの企画展が契機となって、昭和52年、朝倉文夫氏(1883-1964)の膨大なガラスコレクションが一括して当館の収蔵品となりました。
大分県朝地町出身の彫刻家、朝倉文夫氏は近代日本彫刻の祖として著名ですが、ガラス器のコレクションでも広く知られていました。氏のコレクション歴は古く、例えば大正10年に開催された「薩摩ガラス陳列会」にはすでに18点を薩摩ガラスとして出品されています。今回出品の藍色金彩切子碗(31)、藍色金彩切子蓋物(33)はこの陳列会に出品されたものです。
薩摩出身の古美術商、牧野直吉氏が、前述の陳列会開催に協力されたという記録が残されていますが、氏の孫である牧野清吉氏からおうかがいした話によると、朝倉氏のコレクションの方法は、数人の出入りの古美術商にかなりの金額を配分し、気に入ったガラス器があれば買い求めてくるように、と指示されたそうです。当時、ガラスは美術品としての評価が低く、いくら買い集めても預かった金額に達することがなかったとのことでした。このような玉石混淆を黙認し、まとめて購入するという豪放な蒐集のやり力が、結果的には、今日名品とされる多数の作品を収集することができたといえるのかもしれません。
朝倉コレクションの白眉は何といっても藍色切子船形鉢(86)、紅色切子三段重などの薩摩切子の名品です。さらに、今日では殆ど入手出来ないような中国清朝のガラスが多く含まれています。白地紅被騎馬人物文瓶や白地紅被楼閣瑞祥文蓋付壺、紫色亀甲文鉢などはその好例です。(以下略)
【作品解説】より一部紹介 生産国・年代・寸法・技法や見どころなど詳細解説
●ヨーロッパのガラス
エナメル点彩ゴブレット
ベネチア 16世紀初期
12.2×6.1cm
ベネチア製、クリスタッロ(cristallo)のゴブレット。クリスタッロとは水晶のようなガラスを意味し、ベネチアで開発された。口縁部には青・白のエナメルで点彩を施している。ボウルの底部は金彩の輪で装飾され、全体の形態は当時の金属器を写したものである。
(以下、年代、寸法、解説略)
ダイヤモンド彫り蓋付ゴブレット ベネチア
船形水差 ベネチア
装飾ステムゴブレットベネチア
レースガラスゴブレット ベネチア
緑色瓶 ドイツ
ダウメングラス ドイツ
エナメル彩方形瓶 ドイツ
エナメル彩牡鹿文蓋付ジョッキ ドイツ
鹿形パズルゴブレット ドイツ
エナメル彩狩猟文ボーカル ドイツ
装飾ステムゴブレット
エナメル彩双頭鷲文フンペン
エナメル彩キリスト像フンペン
レースガラス蓋付ゴブレット オランダ
ダイヤモンドスティップリング天使文ゴブレット オランダ
グラビュールバッカス文蓋付ゴブレット オーストリア
シレジアのガラス職人、フリードリッヒ=ヴィンターの作
エナメル彩鶏文コップ オーストリア
ゴールドサンドイッチ人物文コップ チェコ
ゴールドサンドイッチ人物文蓋付ゴブレット チェコ
グラビュール鳥動物文ダブルゴブレット チェコ
切子脚付鉢 ボヘミア
切子脚付鉢 ボヘミア
藍色切子皿 ボヘミア
レースガラスカンティール スペイン
グラビュールジャコバイトゴブレット イギリス
エナメル彩鳥麦文ツイストステムエールグラス ベルビー作 イギリス
グラビュールサンダーランド橋文ゴブレット イギリス
カットガラス蓋付鉢 イギリス
藍色金彩切子碗
藍色金彩切子鉢
藍色金彩切子蓋物
藍色金彩切子蓋物月光色エナメル彩かまきり文花瓶 エミール・ガレ作 フランス
蝶文朝顔形花瓶 エミール・ガレ作 フランス
蘭花文八角扁壺 エミール・ガレ作 フランス
葡萄文詩文入栓付瓶 エミール・ガレ作 フランス
●和ガラス 日本のガラス
◆長崎系吹ガラス
緑色泡玉文蓋物
大振りで緑色鮮明な蓋付鉢。身蓋ともに水草と泡玉を配している。身の意匠は、水草を二列に、泡玉は六個を縦に連ねている。高台・底面には型跡があり、側面三ヵ所に割型の跡が残されている。蓋身ともに揃った大型鉢の佳品である。
藍色十角鉢 以下解説等略
緑色葡萄繋文鉢
菊唐草文鉢
青色菊形向付
緑色膚草文四方向付
乳白ツイストステム杯
つまみ脚付杯
つまみ脚付杯
ギヤマン彫り菊に蝶文台付杯
藍色緑台付杯
ちろり
藍色牡丹唐草文栓付酒瓶
紫色藤蒔絵徳利
黄色瓢箪形徳利
練上手徳利
練上手脚付杯
◆江戸系切子
切子蓋付三段重
切子蓋付三段重
切子蓋付三段重
切子脚付杯
切子三重盃・盃台
切子三重盃
グラビュール梅文盃
切子向付
切子碗
切子蓋付菓子器
切子蓋付水注
切子墨床
切子筆洗
切子文房具揃 筆筒・筆洗・水滴・硯屏・墨床・文鎮
軸端
色ガラス筆巻簾
芦に雁文ガラス入鼈甲櫛
風景文ガラス入鼈甲櫛
笄 こうがい
簪 かんざし
◆薩摩切子
紅色切子皿
紅色切子皿
紅色切子皿
紫色切子皿
切子小皿
薩摩系切子大皿
藍色切子向付
紅色切子向付
黄色切子向付
藍色切子船形鉢
紅色切子鉢
藍色切子丸文鉢
藍色切子台付鉢
紅色切子向付
紅色切子三段重
藍色切子蓋付壺
藍色切子酒瓶
藍色切子小瓶
藍色切子脚付杯
薩摩系切子脚付大杯
藍色切子脚付杯
藍色切子脚付杯
藍色切子脚付杯
紅色切子筆筒
切子文房具揃
●乾隆ガラス
藍色鉢 中国・清時代
紫色鉢
紅色動物文鉢 「隆年製」銘
紫色亀甲文鉢「大清乾隆年製」銘
紅色牡丹唐草文鉢「大清乾隆年製」銘
黄色草花文鉢
青色花鳥文鉢
藍色牡丹鳳凰文鉢
黄色山水人物文壺
白地紅被唐子文董付壺
白地紅被騎馬人物文瓶 「乾隆年製」銘
白地藍被椿文壺
黄色紅被人物花鳥文瓶
白地紅被花鳥文花瓶
白地紅被花鳥人物文蓋付壺
白地紅被楼閣瑞祥文蓋付壺
白地藍被花鳥文蓋付壺
白地藍被花鳥文蓋付壺
白地緑被水辺花鳥文蓋付壺
白地二色被山水遊馬文蓋付壺
白地二色被花鳥文瓶
白地紅被獅子文瓶
白地藍被唐草文瓶
白地多色貼蝙蝠果実文壺
白地多色貼雨龍文瓶
紅白大理石文瓶 「乾隆年製」銘
藍色壺
褐色瓶
紅色三脚香炉
藍色獅子彫り印材
【用語解説】より一部紹介
アップリケ
ガラスが熱いうちに、あらかじめ花や昆虫などの形に作っておいた色ガラスを、ガラス器の表面に熔着させる技法。冷却後、グラビュールで細部を削って仕上げる。
鋳込み成形
色被せ
浮彫り
江戸切子
エナメル彩色
カットガラス(切子)
カボッション
グラビュール
乾隆ガラス
薩摩切子
薩摩藩では島津斉彬(1809~58)が藩主となった嘉永四年(1851)以降、ガラスの製造を本格的に開始した。とりわけ銅による紅ガラスの創製は、多くの困難を克服してなしとげられたものである。透明ガラスに銅赤ガラスや藍色ガラスを厚く被せかけ、幾何学的な文様をカットしている。日本の近世が生み出した唯一の美術的価値をもつガラス工芸として評価が高い。
サリシュール
ストロベリーダイヤモンド文様
スノーフレークガラス
ガラスの中に白い石粉と気泡が、まるで雪のように浮遊しているガラスを「スノーフレーク(雪片)ガラス」とよんでいる。これは、18世紀に中国で作り出されたもので、乾隆ガラスや鼻煙壺などにも多くの作例がある。
ツイストステム
長崎系吹きガラス
バルトグラス
ファソン=ド=ブニーズ
ほか